2023/11/21

 イスマイル・カダレ『死者の軍隊の将軍』読了。全体として陰鬱。夜と雨のイメージ。現実と空想が混濁して、靄の中に包まれたかのよう。x大佐の死体発掘をめぐる話を中心に展開し、そこに将軍や司祭の属する国とアルバニア、それぞれの民族意識が絡み合う。さまざまな語りが重なり合い、重く暗い空気を醸す。作中人物の徒労が読み手にまで伝播するようだ。

 西村曜『コンビニに生まれかわってしまっても』。上手い。ひじょうに上手い歌集。音韻上の連想から意味の異なる方へ歌を導いたり、言い間違いから詩を立ち上げたり、ひじょうに達者。一頁に一首だけ載せるとかでもっとゆとりをもって組版したほうがこれらの歌はよかったろうなあと思った。貧困の影も感じた。