2023/11/26

 お休みの一日だったので、ありがたく惰眠を貪る。午前中から13時頃くらいまではイスマイル・カダレ『草原の神々の黄昏』を読んで6章のうち3章を読み終える。読めることは読めるのだが、やはり第二次世界大戦後のソ連と東欧諸国の関係を理解した上で読んだほうが圧倒的によさげなので、あとに回す。

 イスマイル・カダレ『誰がドルンチナを連れ戻したか』。アルバニアに伝わる、ドルンチナを連れ戻すコンスタンチンの伝説をもとにしている。遠国に嫁ぐこととなったドルンチナ。彼女には9人の兄弟がいて、その中で末弟のコンスタンチンは母親が望むときにはドルンチナを連れ戻すという〈誓い〉(ベーサ)を立てる。しかし、ペストによって9人の兄弟はすべて死亡。3年後、ドルンチナはアルバニアの母のもとへ帰る。そこでドルンチナは自分をここまで連れ帰ってきたのは、死んだはずのコンスタンチンだと言い……。

 話の焦点は表題のとおり、「誰がドルンチナを連れ戻したのか」に合わせられていて、この事件を捜査するストレスの視点に寄り添うように記述されている。ドルンチナを連れ戻したのは誰なのか−−死んだはずのコンスタンチンなのか、をめぐって出来事が展開する本書はミステリのようにも思える。最後に、この物語はアルバニア人にとっての〈掟〉(ベーサ)の重要性を語り、ストレスも失踪する。

 作中の不穏な空気感や、現実と伝説(幻想)が渾然一体となるような話のつくり、二転三転する展開、などがとてもよかった。カダレはアルバニア人民族意識にこだわって描いている気がするので、『砕かれた四月』も楽しみ。